ランニングの「上達」とは?
以前より長く走れるようになった。いつものコースを、少し速く走れた。大会で目標にしていたタイムを達成できた。
ランニングでは、自分の成長を数字で確かめることができます。
積み重ねてきたことが結果に表れると嬉しいですし、次の目標に向かう力にもなります。
一方で、続けていても記録が変わらない時期はあります。
仕事や生活の変化によって、思うように練習できないこともあるでしょう。
そんなとき、走ることで得ているものを、もう少し広く見つめてみたいと思います。
以前より、自分に合ったペースがわかるようになった。疲れていることに気づき、練習の予定を変えられるようになった。
うまく走れない日にも、試してみたいことが見つかるようになった。
こうした変化も、走り続けてきたからこそ得られたものです。
「以前より、自分の走りがわかるようになった」
そんな視点から、ランニングの上達を考えてみたいと思います。
同じ道を走っていても、気づくことは変わる
走り始めた頃は、決めた距離を走り切ることで精いっぱいだったかもしれません。
続けるうちに、同じ道の中でも、いろいろなことに気づくようになります。
走り始めにペースを上げすぎると、後半が苦しくなること。
緩やかな上り坂でも、呼吸が変わること。
昨日は楽に感じたペースが、今日は少し重たく感じられること。
距離やタイムが同じでも、自分が受け取っている情報は変わっています。
最初は「なんとなく苦しかった」としか言えなかった感覚が、少しずつ具体的になっていく。
呼吸が苦しかったのか、脚が重たかったのか。走り始めからそうだったのか、途中で変わったのか。
違いに気づけるようになると、振り返り方も変わります。
例えば、後半に苦しくなった日のことを思い返してみる。
最初から頑張りすぎていなかったか。
いつもより暑くなかったか。
前日の疲れはどうだったか。
一回の練習だけで、理由がはっきりするとは限りません。
それでも、いくつかの可能性に気づけると、次に試すことが見えてきます。
次は出だしを少し抑えてみる。走る時間帯を変えてみる。その日の状態に合わせて、予定を短くすることも考える。
自分の状態を知り、選べることが増えていく。そこにも、ランニングの上達があるのだと思います。
基本があると、試せることが増えていく
自分の感覚を大切にしながら走るためには、基本を繰り返し、身につけていく時間も大切です。
動きの一つひとつにすべての注意を使っていると、ほかのことへ目を向ける余裕は持ちにくいものです。
繰り返すうちに自然にできることが増えると、その分、周囲の状況や小さな感覚の違いにも気づきやすくなります。
自転車に乗り始めたときは、バランスを取ることだけで必死だったのに、慣れると進む先や周囲を見られるようになる。
あの変化を思い浮かべると、わかりやすいかもしれません。
ランニングでも、教わった基本を試し、繰り返し確かめる時間には意味があります。
一度の練習でうまくできたことも、次には同じようにできない。
頭では理解していても、走ってみると感覚がつかめない。
そこで何度か取り組むうちに、少しずつ自分の動きとして馴染んでいくことがあります。
ただ、憧れる人の動きをまねようとしても、同じようには走れないことがあります。
体格や身体の特徴、これまで積み重ねてきた経験は、一人ひとり違います。
その人の走りから学べる基本と、その人だからこそ成り立っている動きを、少しずつ見分けていく必要があるのでしょう。
人から学び、自分で動いてみる。うまくつかめなければ、もう一度教わったことを確かめる。
その往復の中で、自分にとっての意味が少しずつわかってきます。
基本に戻れることは、新しいことを試す支えにもなるのです。
気づいたことを、次の一回につなげる
では、いつものランニングで、どんなことから始められるでしょうか。
一つの方法として、走り終わったあと、距離やタイムと一緒に「今日、気づいたこと」を残してみるのもよさそうです。
「前半を抑えたら、最後まで余裕があった」
「フォームをいろいろ考えていたら、かえって力んだ気がした」
「友人と話しながら走る時間が楽しかった」
立派な分析にする必要はありません。自分が感じたことを、短い言葉で残しておきます。
ここで大切にしたいのは、その日の感覚を、すぐに唯一の正解にしないことです。
今日は楽に走れた方法が、次も同じように合うとは限りません。
少し意識を変えたこと以外に、天候や体調が関係していることもあるでしょう。
気になったことを、別の日にも確かめてみる。合わなければ戻してみる。
自分ではわからないことを、コーチや一緒に走る人に相談してみる。
そうして経験を重ねると、教わったことへの理解とともに、「自分はこういうときに、こう感じやすい」という理解も育っていきます。
もちろん、走っている間ずっと、自分を観察し続ける必要はありません。
腕の振り方を気にするあまり、呼吸や脚の動きがわからなくなってしまうこともあるでしょう。
細かな部分に意識を向けると、全体の感覚を捉えにくくなる場合もあります。
一つの感覚を確かめたら、少しそこから意識を離して、いつものように走ってみる。
考える時間と、動いて感じる時間。その両方を持ちながら、自分の走りを探っていけるとよいのだと思います。
次も走りたくなる理由を、今日の中に
気になるから試してみる。予想と違うことが起きて、面白くなる。もう一度やってみたくなる。
そんな気持ちは、ランニングを長く続けていくうえでも、大切なものではないでしょうか。
目標の大会に向かって練習する時間には、張り合いがあります。その毎日の中にも、楽しみを見つけることはできます。
いつもの道に、季節の変化を見つける。走り出したときと走り終わったときで、気分がどう変わったかを感じる。
前はわからなかった身体の感覚に、ふと気づく。
記録が動かなかった日にも、次につながる発見はあります。
長く走り続けていると、以前のように記録を更新できない時期もあるでしょう。
それでも、その時点の自分に合う走り方を探したり、これまで気づかなかった動きの感覚をつかんだりする余地はあります。
速さの変化とともに、理解が深まることにも喜びを感じられたら、ランニングとの付き合い方はさらに広がっていきそうです。
今日の自分には、どんなペースが心地よいのか。
どんな走り方をすると、どんなふうに感じるのか。
そして、自分は走る時間の何を面白いと思っているのか。
走るたびに、その答えが少しずつ変わっていく。
いつもの道に出かけることが、自分のことを知り直す時間にもなる。
そんな楽しみ方を、これからのランニングに加えてみてはいかがでしょうか。

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