「ゆっくり走る」が、意外と難しい
「今日はゆっくり走ろう。」
そう思って走り始めたのに、気づけばいつものペース。
時計を見て少し落としても、しばらくするとまた速くなっている。
反対に、ゆっくりを意識するほど足の運びがぎこちなくなって、「これなら、もう少し速く走った方が楽かも」と感じる。
そんな経験はありませんか?
速く走ることには練習が必要だと感じても、ゆっくり走ることは、すぐにできそうに思えます。
でも、実際にやってみると、意外と加減が難しいものです。
普段のペースには、慣れたリズムがあります。
そこから速さを変えようとすると、いつもは考えずにできていた動きが、急に気になることもあります。
足はどこに置けばいいのか。腕はどれくらい振ればいいのか。歩幅はもっと小さくした方がいいのか。
そんな戸惑いの中にも、自分の走り方を知る手がかりがあるかもしれません。
ゆっくり走って、動きのつながりを確かめる
ゆっくり走るときに確かめたいことのひとつが、動きのつながりです。
着いた足に、どのタイミングで体が乗っていくのか。そのとき、頭や胸、骨盤、脚はどんな位置関係にあるのか。そして、そこから次の一歩へ、どう移っていくのか。
いつもの速さでは滑らかに走れているつもりでも、少し速さを落とすと、体がうまく乗らない感じや、動きが途中で途切れるような感覚が気になることもあります。
そこには、普段は勢いに助けられ、気づかずに通り過ぎていた動きの癖があるのかもしれません。速さを変えることが、いつもの走りを見直すきっかけになります。
もちろん、速さが変われば、走り方も変わります。ゆっくり走ったときにぎこちなくなるからといって、普段の走りが間違っていると決めつける必要はありません。
確かめたいのは、その速さの中で体を支えながら、次の一歩へ無理なく動きをつなげられているか、ということです。体の各部分を決まった形に固定しようとするよりも、動いている中での位置関係やタイミングに目を向けてみましょう。
ただ、あれもこれも一度に考えていると、かえって肩や腕に力が入ってしまうこともあります。
今日は肩まわり、次は足に体が乗る感覚、とひとつずつ確かめるくらいで十分です。少し動かし方を変えて、感覚の違いを味わってみる。そして、いつもの速さに戻したときにはどう感じるか、比べてみる。
気づいたことを、すぐに全部直そうとしなくても大丈夫です。まずは「自分はこんなふうに走っているんだ」と知るところから始めてみてください。
自分にとって余裕のある速さを探す
動きを確かめるためにも、呼吸や気持ちに余裕のある速さを探してみましょう。
ひとつの目安になるのが、走りながら会話を続けられるかどうかです。息を継ぐために言葉が何度も途切れるようなら、余裕を持って走りたい日には、少しペースを落としてみる。会話のしやすさは、運動の強さを確かめる目安としても使われています。
呼吸とあわせて、脚の重さや、どれくらいの時間動いているかにも目を向けてみましょう。
そもそも、「ゆっくり」は人によって違います。
誰かにとって余裕のあるペースが、自分にも楽とは限りません。同じ自分でも、その日の疲れや暑さ、コースによって感じ方は変わります。
「このペースなら、ゆっくりのはず。」
時計の数字を見ながらそう思っていても、呼吸が苦しかったり、動きに余裕がなかったりするなら、今の自分には頑張る速さなのかもしれません。
時計は便利な手がかりです。そこに、「今、どんな感じで走っているだろう?」という確認を足してみると、自分に合うペースを探しやすくなります。
試すなら、まずは平らで走りやすい場所で、いつものペースより少し落としてみましょう。
肩をすくめていないか。手を強く握りしめていないか。足が地面に触れる感覚や、呼吸はどう変わったか。
数字を確かめるのと同じように、体の感覚も確かめてみてください。
歩きを挟むのも、ひとつの工夫
それでも、走っているとすぐに息が上がる。速さを落とそうとすると、どうにも動きづらい。
そんなときは、歩きを挟んでも大丈夫です。
短く走って、歩きながら呼吸を整える。落ち着いたら、また短く走ってみる。走る時間や歩く時間は、その日の感覚に合わせて調整できます。
「歩いたら練習にならない」と考えていると、苦しくても走り続けたくなります。でも、今日は余裕を持って体を動かしたい。そういう目的なら、歩きを入れることも、そのための工夫になります。
速さを変えながら、自分の走りを知る
ゆっくり走っていると、「もう少し速く走れそう」「これで練習になっているのかな」と、物足りなく感じることもあると思います。
その余裕を、今日は自分の動きを確かめるために使ってみる。
いつもなら見過ごしていた力みや、足に体が乗るタイミング、次の一歩へのつながりに気づく時間になるかもしれません。
ゆっくり走ることも、自分で速さを選び、動きを調整する練習です。最初から上手にできなくても、感覚を比べながら、少しずつ加減をつかんでいけばいい。
次に「今日はゆっくり走ろう」と思ったら、時計を見るときに、自分の体にも聞いてみてください。
「今の速さで、どんなふうに走っているだろう?」
その答えを確かめながら、自分に合う「ゆっくり」を見つけていきましょう。

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