自己ベストが出ない時期にも、成長はある?
過去の記録を見返したとき、いちばん速いタイムだけが、しばらく前のまま残っている。練習を続けて、新しい記録は増えているのに、その一つをなかなか越えられない。以前は更新を喜べていた分、同じような結果が続くと、気持ちが揺れることもあります。
そんなとき、記録以外にも成長があると言われても、すぐには納得できないかもしれません。もっと速く走りたいと思って取り組んできたのだから、その悔しさにも理由があります。では、記録が動かない間に起きていることを、どう捉えればよいのでしょうか。
自己ベストと、いつもの走り
自己ベストは、これまでで一番よかった一日の結果です。それを目標にするのは自然なことですが、普段の走りがどのくらい安定してきたかまでは、その数字だけでは分かりません。
たとえば、同じコースを走ると、以前は終盤に大きくペースを落とす日が多かったのに、最近は最後まで同じような調子で走れる日が増えたとします。最高記録を更新したわけではなくても、何度か繰り返してできることに変化がある。一度の最高の走りと、普段できる走りの水準は、別々に見てよいものです。
ここで気をつけたいのが、比べている条件です。坂の多い道と平らな道、普段の練習と大会では、同じ距離でも状況が違います。天候やその日の練習の目的、自分が感じていた余裕によっても、記録の受け止め方は変わります。
遅かった一回だけで後退と決められないように、楽に走れた一回だけで体力が上がったとも言い切れません。似た条件の走りを何回か並べて、そこに同じ傾向があるかを見る。成長を見つけるためには、まず比較できることと、まだ分からないことを分ける必要があるのだと思います。

できるようになったことが、残っているか
記録から少し離れると、練習そのものにも、以前との違いが見つかることがあります。
教わった動きを試したあと、その日に何が難しかったかを説明できる。うまくいかなかった部分を、指導者に具体的に尋ねられる。こうした変化は、タイムの短縮とは違いますが、自分で練習に取り組む力として捉えられます。
動きについては、その場でうまくできたことと、身についたことにも違いがあります。練習中は、直前の説明や声かけが手がかりになっています。日を置いても同じように取り組めるか、声をかけてもらわなくてもできるかは、その動きが残っているかを考える目安になります。
その日に大きく変わらなくても、後日の練習で以前より迷わず取り組めたなら、それは振り返る価値のある違いです。逆に、教わった直後にはできても後日難しくなるなら、まだ練習の仕方を考える余地があります。
こうした変化が次の自己ベストを保証するわけではありません。ただ、できるようになったことまで、記録が出なかったという理由で見落としてしまうのは惜しい気がします。

変わっていないことも、話せるように
一方で、振り返っても変化が見つからないこともあるでしょう。そのときまで、成長しているはずだと言い聞かせるのは、少し無理があります。
動きを身につける過程では、上達が一時的に止まったように見えることもあります。けれど、その理由がいつも同じとは限りません。練習の方法が課題に合っているか、疲れが重なっていないか、集中して取り組めているか。回数を増やす前に考えたいことはいくつもあります。
最近の練習を指導者と話すときにも、変わったところと、変わらず困っているところの両方があれば、次に取り組む内容を考えやすくなります。記録が出ないことを努力不足だけで説明せず、練習の中で何が起きているかに戻れるからです。
もっと速く走りたいという気持ちは、そのまま持っていてよいと思います。まだ届かない記録を見ながら、今できるようになったことも確かめる。その両方を見ていくことで、結果が出なかった一日についても、もう少し具体的に話せるようになるのではないでしょうか。

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